睡眠は最重要です。十分な睡眠を取りましょう。

ある学校では、宿題をたくさん出し、生徒に対し徹夜をしてでもこなしていく人が
伸びるという話をしています。

これは、嘘です。まちがいです。
生徒や保護者にそうした話をしている教師は、そういう勉強生活をしていないはずです。
していたら、無意味で愚かな行為であることが身にしみてわかっているはずだからです。

夜更かしや徹夜をして勉強をすると、頑張った気分になれます。
あるいは、日中にあまり勉強できなかった罪悪感を解消できる気がします。

しかし、残念ながら、ただの錯覚です。


まず、効率がきわめて悪いです。たっぷり時間があるように思えて
無駄な作業に時間をかけてしまうこともありますし、
勉強していてもなかなか進みません。眠いので当然のことです。
根性でどうにかなる問題ではありません。
つい無駄な作業をしてしまうのは、気力が減退しているために
着手にエネルギーを要しない作業や、簡単に成果が得られる作業といった、
手軽に安心感が得られるような逃避行動をしたくなるからです。

そして、何かを記憶できたとか理解できたとか思ったとしても、
忘却率がとても大きく、数日後にはすっかり忘れ、わからなくなっています。
よりよく、より多く記憶するためには、脳が健康な状態であることが必要ですし、
長期記憶にするためにしっかりと睡眠をとることが必要です。
睡眠不足での勉強は、栓をしないでお風呂にお湯を入れるようなもので、
入れても入れても結局何も残りません。

さらに、翌日およびその後数日間は体調が悪くなり、勉強効率が落ちるだけでなく
勉強からも遠ざかってしまいがちです。
トータルで大きなマイナスになります。愚行としか言いようがありません。
睡眠不足が続くと精神的に病みがちにもなります。
鬱になる人のほとんどは、夜更かしがきっかけです。
自分はショートスリーパーだからと言い張る人もいますが、
体だけでなく脳も成長途上にある中高生の時期は
遺伝的にショートスリーパーであったとしても睡眠が必要なはずです。
昼間に眠気が出るようであれば、ショートスリーパーとはいえません。
ショートスリーパーを自認している人の中には、昼寝などで睡眠を分散しているだけの人
も多くいます。そうであれば、ホルモンバランスなどに影響が出てくるでしょう。
成長ホルモンをいつ放出すればいいのか、脳が混乱しているかも知れません。


英語学習においては、根性論でなんとかできなくもありません。
思考や理解というより、単純に英語に浸っている時間がものをいうからです。
しかし、数学、物理、化学、小論文については、脳が健康な状態で、
しっかりと思考することができなければ実力がつきません。
たとえ問題集を解きまくったとしても、睡眠不足の状態では
ほとんど力はつかないです。
中学数学では公式や解き方を覚えて、それにあてはめれば高得点を
取ることが可能ですが(力がついていなくても高得点が可能)、高校数学では不可能です。
ましてや、難関大学の入試問題では手も足も出なくなります。

単なる作業や肉体労働であれば、睡眠不足でもなんとかなります。
これは私自身が深夜のパン工場のアルバイトで確認しました。
しかし頭をフル回転させて思考すべき状況には対応できません。

部員の中には私の真似をしようとする人もいますが、まったくおすすめできません。
少なくとも高校3年間ではムリです。体調を崩し精神的におかしくなるだけです。
ムリだと言うと反発してよけいにしたくなるものなので、どういう生活をしているかは
公開していません。個別に聞かれても答えません。


とにかく寝ましょう。
夜更かしは避けましょう。
昼間頑張ったから、リラックスタイムに、ご褒美としてゲームをして寝よう、動画を見よう、
なんて考えないで下さい。
ゲームや動画視聴は休憩になりません。目が冴えてしまい夜更かしにつながります。
夜は意思の力が低下していますので、決めた時間にゲームや動画視聴を終えることは困難です。
もうちょっと、もうちょっと、と伸ばして気づけば真夜中です。
罪悪感を抱えながら、興奮した脳で眠ろうとしても寝付きにくく、
睡眠中の脳内で反復され記憶が増強されるのは、眠る直前に目にしたものです。
そして翌日は体調不良で、ねむいだるい効率の悪い一日となります。
夜に誘惑にはまってしまうと、簡単に抜け出せるわけがありません。
誘惑の最初に拒否することが必要です。

高校生活そのものがゲームだと考えてください。
自分を主人公とした、一回限りのRPGです。
架空の世界ではなく、この現実の世界の中で頑張ってください。
もちろん、どんな結果になってもゲームオーバーにはなりません。
一人一人違うステージに進んでRPGが続きます。
結果によってステージが変わるだけなので、どんな結果でも失敗ではなく
経験値としてプラスに加算されていくだけです。
ただ、人生においてたどり着きたい場所があるなら、そこに行けるようにステージをクリアしていく
方が好ましいです。クリアする努力をしている過程そのものを楽しむことができます。

あるいは、自分の日常が動画の一場面だと考えてください。
結末は自分の理想の状態で、そこにつながっていく今日をいま過ごしていると考えましょう。
将来はこうなる、そこから遡ると、今日はこういう一日を過ごしている、と
自分で自分の人生の動画のシナリオを想像(創造)しながら過ごしたいです。
そうすれば、くだらないことに時間を使っていられなくなります。
一つ一つの行動の選択に意味が生まれてきます。
これが主体的な生き方につながっていきます。


通学に時間がかかる人は、どうしても睡眠時間を削りがちです。
自分にとって絶対に必要なことは何なのかをあきらかにして、
優先度の低い行動をやめるという選択をすることによって
睡眠時間を確保するようにしてください。
やりたいことはあるでしょう。
せっかくの高校生活なので、もっといろいろ楽しみたいとも思うでしょう。
しかし、今、睡眠不足の生活を続けると、将来の進路に影響が出ます。
将来の健康も心配です。
高校でできなかったことは、大学に入ってからやることを考えてみてください。
いちばんやりたいことが何なのかをはっきりさせたなら、
2番目にやりたいことは捨てる覚悟も、時には必要です。
2番目以下にやりたいことのために、1番目を捨てようとしていないか、考えてみてください。


とにかく、しっかりと眠ってください。
6時間は最低限必要です。7時間は眠りたいです。8時間でもいいです。
私は大学受験前の1年間は毎日8時間眠っていました。だから数学で全問解答できたのかも知れません。
これから高校進学をする人であれば、
通学に時間がかからない高校をあえて選択することも有益です。
通学で消えていたはずの時間を有益に使えるなら、高校の差など問題になりません。

休日には昼まで眠っているという人は、ふだんの睡眠が足りていません。
できれば、休日も平日と同じ時刻に起きて同じ時刻に眠る生活をしてほしいです。

しあわせの形、対象はいろいろありますが、
もっとも根本のしあわせは、心身ともに健康であること、であるはずです。
健康でなければ、何を所有していても、財産がいくらあっても、楽しくないはずです。
欲にかられて、健康を犠牲にして、やりたいことをやったとしても、しあわせにはなれません。
健康を失うまでは、なかなかそう思いにくいです。高校生であればなおさらでしょう。
しかし、いろいろな欲が出てくるのは健康だからです。病気の人を思いやって、我が身をふり返ることも大切です。
おなかが激しく痛むときや、頭が割れそうにガンガンするとき、吐き気が治まらないときに
前から欲しかったものを渡されても、まったく喜べません。
難病にかかり肉体面で苦しみながらも夢を追いかけて楽しめる人は人生の上級者で、きわめて少数です。
精神面で健康を損なえば、夢を追いかけることができないというより、自分が別人になり自分を失います。
睡眠不足は精神の健康を損なうことにつながりやすい、想像以上に危険な行為です。
あえて健康を失うような行為を避け、
健康の土台の上に、自分の夢を載せていってほしいです。


このメッセージが必要な人に届きますように。