「子どものため」って、本当か?

2021年も終わりですね。

早いものです。
BENBUは高校生を主な対象としているため、長くても3年で卒業します。
あっという間です。
中学から入ってくれる方もいて、とてもありがたいのですが、
長くなる分、卒業時がよりつらくなりそうです。

受験生にとっては年末年始は関係がありませんので、
BENBUでも年末年始の挨拶はしていませんし、年賀状も出していません。
本番直前なので、浮かれていたり、新年の目標を考えたりしている場合ではないのです。
受験生はすでに戦闘モードに入っています。



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この記事では、「子どものため」って、本当か? をテーマに書いてみます。

過去の生徒を思い返せば、ゲーム中毒になっていた人もいました。
そんな生徒に母親がiPhoneの最新版を買い与えるという、中毒を悪化させることを
愛情表現のつもりでやっていたため、BENBUからは離れていただきました。
ゲーム中毒(依存症)は深刻な問題ですが、それを悪化させる家庭環境であれば
BENBUでの労力はすべてムダになりますので、その分を他の部員に振り向けます。
ほかにも、親からスパルタ塾に入れられそうだからBENBUに入れてほしいと
頼んできた生徒もいました。本人に勉強する意欲がなく親も変わらないので、短期間で離れていただきました。

親は子どものためを思っていろいろするのですが、
「子どものため」が、実際には子どもに有害であったり、実は「親のため」であったりすることが
よくあります。
勉強をすることが本当に子どものためになるのか、子どもの性格や生まれ持った能力、才能、
興味関心の対象などをよく見て考えていただき、子どもとも話し合って、
将来一人で生きていけるようにベストな道を見いだしてあげてほしいです。

良い大学に入れば良い就職先につながる、という図式は、たしかにまだ存在はしますが、
良い大学に入ったあとで、その中できちんと勉強して成果を出しつつ能力を高めれば、という条件が
隠れています。
大学に入って遊び呆けてしまえば、良い就職先などはありません。
卒業できるかどうかも怪しくなります。

良い就職先につながったとしても、その後、その企業等での活躍が期待されます。
最初から期待が高い分、期待に応えられないと、普通であっても会社のお荷物として扱われることになります。
給料に見合わないし、扱いづらいからです。

大学でも会社でも頑張り続けることが必要になりますが、それができるのか、それに適しているのか、
それを考えた上で、有名大学、難関大学を目指させるべきです。
適性がないのに、無理をして難関大学に仮に入れることができたとしても、
大学で落ちこぼれ、中退か、ただ卒業しただけ、という人生になってしまいます。
大学におけるテストで優・良・可といった判定がなされますが、優をそろえていないと
有名企業・大企業は相手にしません。遊んでいるだけ、サボっているだけの人はいらないからです。

テレビドラマやコミックスの「ドラゴン桜」では、東大合格を人生のプラチナチケットだと
言っていますが、実際にはただの入場券に過ぎません。
入ってからどう過ごすか、どういう能力を身につけどういう人になっていくかがすべてです。
出身大学のネームバリューは、プラスに働くこともありますが、
期待に応えられないと真逆に働く、諸刃の剣です。

私の場合はすべてうまくいきましたが、私の先輩の中には、あるバイオの先端企業で
研究開発の重責に堪えきれず、同棲相手がいたにもかかわらず自分で人生を終えた人もいます。
世間的には羨望される立場・収入・生活であったのですが、
本人はしあわせを感じることができなかったのでしょう。



良い大学、良い就職先が必ずしも子どものしあわせにつながるとは限りません。

では、高校生の時期にどう過ごせばいいかというと、芸術・運動方面で飛び抜けた才能がある場合を除き、
やはり、勉強を一生懸命することだと思います。
言っていることが矛盾しているじゃないかと思われるかも知れません。

私が言いたいのは、
高校生が、自分のために、自分のできる範囲で一生懸命に勉強をする日々を積み重ねること、
そのために時間をやりくりしたり、自分の体調を考えたりすること、
わからないことにぶつかっても、あきらめずに努力を続けること、わかろうとすること、
考えようとすること、考え続けようとすること、
文字をたくさん読み、文字で考えを表現しようとすること、
こうした行為が脳を発達させ、知恵を生む土壌を育み、困難に立ち向かう精神力を養うと考えます。
また、自分をコントロールする能力も身につくと考えます。
努力することは、後天的に身につけることができる才能です。
難関大学を目指してもいいのですが、
勉強する日々を積み重ねること自体が、大学や就職先に関係なく、自分の人生のコントロール力を
身につけることにつながると考えています。
脳が発達するこの貴重な時期に、脳をめいっぱい使って、潜在能力を顕在能力に変えていってほしいのです。

目的は勉強することにあり、志望校合格はそのための動機付けやおまけ程度かなと思っています。

「子どものため」であれば、結果を求めすぎるのではなく、ましてや親の見栄のために叱咤激励するのでもなく、
日々努力している姿勢を評価してあげたいです。
子どもが一人で生きていけるようになれば、親の役目は十分に果たせたと考えていいと思います。

母親が自分自身の評価として自分の成果として子どもの受験結果を求めることは、ぜひ避けてほしく思います。
すべて、子どものしあわせのために本当につながるように、していただきたく願っています。



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県立高校ですら、「あの高校に入ったら楽になるから」と親や塾が言って頑張らせ、その結果、
「嘘だったじゃん」と子どもが言っていたこともあります。
竹高や一高に入っても、何も楽にはなりません。まわりの学力が高くなるため、却って大変になるだけです。

かつて家庭教師をしていた生徒で、都内の有名私立一貫校に通っていた人がいたのですが、
小学生の頃に毎日母親から怒鳴られながら、泣く泣く勉強をしていたことの反動が出て
どうしようもないほどに勉強することを避けていました。
なんのために中学受験をさせたのか、なんのために高い学費を払っているのか、さっぱりわかりません。
有名私立一貫校に入っただけでは、何もしあわせにはならないのです。
県立高校でも、有名大学でも、医学部でも同じことです。

ちょっとでも良い大学に入れたいと考えて、受験直前に志望校のランクを上げさせた親もいました。
その後は知りませんが、自分の能力を超えた目標を強いられ子どもは困ったことと思います。
入れなかったんじゃないかと思いますし、もし入れたとしても能力に合っていないので良いことは何もありません。
大学に入るだけでは、その先につながりません。

「好きなことで生きていく」というフレーズが一時期はやりました。
YouTuberが、そうした生き方の代表とされるのですが、
YouTuberは、めちゃくちゃ努力をしています。
たしかに好きなことかも知れませんが、そのために払っている努力は並大抵ではありません。
(もうYouTuberの世界も、新たに参入して稼げる職業ではなくなりましたが)

プロゲーマーになって稼ぐんだ!といってゲームに熱中している人もいますが、
本当に稼げる人は、世界の中で数人だけです。
その他の人は生活すらままならないのが現実です。
仮に才能に恵まれて活躍できたとしても20代半ばでの引退が相場です。
ゲームが細分化されているため指導者としての職業もなく、有名人でないと解説者にもなれず
職業として成り立ちません。
ゲーム業界の洗脳作戦にひっかかって、どうしようもない30代が増えそうなのが気がかりです。
現在、プロゲーマーを目指してゲームに明け暮れている人は、
ただ遊びたいため、勉強から逃避したいための言い訳をしているだけです。
働かずに宝くじを買って当てて一生楽に暮らすんだ、と言っているに等しいです。
以前日本一になった人が世界で勝ち残れるようになるために、毎日8時間以上ゲームを
トレーニングとしてこなしていました。その人の手はゲームレバーを握ったりボタンを叩いたりして
豆だらけでした。痛みに耐えながら0.0何秒速く反応できる練習を繰り返していました。
こうなると、ゲームを楽しいとは思えないはずです。そこまでの練習をしても世界レベルには遠いのです。
プロゲーマーとして稼げるようになるより、東大に入る方が、ずっと楽だと思います。

バイオリニストの宮本笑里さんが、バイオリニストを目指すかどうかを父親から決めさせられたのは12歳のときでした。
12歳頃に子ども用のバイオリンを卒業するタイミングになるからです。
父親であるフルート奏者の宮本文昭さんは、
「演奏をして木戸銭をいただく人になるには、本当に必死にやらないとなれない。
 必死にやったとしても、なれる人となれない人とに分かれちゃう。
 そのずっと手前のYの字の二股のところで、子どもに言ってあげないといけないんですよ。」
と言われています。そして12歳の娘に対して、
「本気でやるつもりがあるんだったら、俺の目をみて返事してくれ」と決断を迫り、
笑里さんは2日間考えて、バイオリンを選んだそうです。
そこからは、1日16時間の猛練習の日々が始まりました。
絶対に東大に入る方が楽です。

上の方で書いた、自分で人生を終えた先輩は、もともと激務に適性がなかったのに
良い大学を経て良い就職先に入り、無理をし続けたことが失敗でした。
また、自分の専門分野の勉強だけをして、視野を広げず、心の問題を扱えないままに
理想的な立場・収入・生活を求め、自分のコントロールを失ったための失敗でした。
大学以降の勉強の幅が狭かったのでしょう。
好奇心を持ち幅広く勉強をし続けることは、大人になっても必要だと思います。
自分でどんどん勉強していくスキルは、生き方を楽にする上でも有益です。



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私自身も、高校生に負けないよう、日々勉強を続けています。
さすがに高校生と同じ教材を使うことはないですが(評価のためには使います)、
できること、わかることの範囲をどんどん広げています。
法律の分野や簿記の分野、心理学の分野もかなり深く掘り下げました。
新年から新たな分野に着手します。
おそらく、BENBUをやめたあとに最大のエネルギーを注ぎ込む対象になります。
すぐにBENBUをやめるということではなく、まだまだ継続しますが、
生徒にひけをとらない努力をし続けていきます。
努力をし続けている人でないと、努力をしている人を応援する資格はないと考えています。



同年代の人たちは、守りに入ってしまって、泥臭い努力をしなくなった人が多いです。
同窓会に顔を出しても昔話ばかりで、これから新しいことをやっていくという人がほぼおらず
時間のムダなので行かなくなりました。
私にとっては、精一杯の努力を続けている高校生は、とてもありがたい存在です。
新年からは前向きに努力をし続けている大人の新しい仲間と交流を持つことになっています。
退化・老化していく下りのエスカレーターに乗りながらも、階段を駆け上がり前進し進化し続けていきます。
なんとなく、脱皮をして新たな自分になろうとしている最中のように感じています。