神授業って、ごまかし?

年が明けました。
今日(1月1日)も生徒が6人来てくれました。自宅だとだらけていたでしょうが、BENBUに来てしまえば自然と勉強してしまいます。
BENBUは自然と勉強したくなる、そんな場所なのです。

さて、ホームページのトップ下部(http://benbu-tsukuba.com/index.html)に、
「少し前によく見かけた「神授業」広告の内容も、参考書にありふれたものでした。」
と書いています。
これについて、感想をいただいたので、今回はこれについて補足をしようとおもいます。

わたしが批判的に書いているときには、文字にしている以上に二重、三重に根拠があります。全部を書くと長ったらしくなるので、一部にとどめています。
「神授業」広告についても同様です。書いていなかったものの、これまた一部になりますが、なぜ批判的な態度なのかをお伝えします。

「神授業」広告は、
英語の前置詞 "on" について、中学校では「~の上に」と習っただろうけど、ホントは違う。「~に接して」なんだ。だから天井にとまっているハエは "fly on the ceiling" でいいんだ。
といったような内容でした。
これを見て、生徒は「おお~、すげ~」とか思ったのでしょうが、実は、英文法の本なら普通に書いてあるのです。

「~に接して」は、神でもなんでもなく、どこにも書いてあるあたりまえのことで、これだけでも、十分に詐欺っぽいのですが、それだけで批判的になっているのではありません。

「~に接して」だけじゃまずいでしょ、わからなくなるでしょ、と、わたしは言いたいのです。

"on" を「~に接して」と覚え込むと、次のような英文がわからなくなってしまいます。

1.On hearing the news, she burst into tears.
2.Frogs live on flies.
3.The future depends on what we do in the present.
4.He must have lots of things on his mind.
5.Tsuchiura is on the Joban line.

1.その知らせを聞くや否や、彼女は急に泣き出した。
2.カエルはハエを食べて生きている。
3.未来は今何をするかにかかっている。
4.彼はたくさんの悩みを抱えているに違いない。
5.土浦市(駅ではない)は常磐線沿いにある。

この2~5は、どれも、「~に接して」では理解不能です。
(1は「知らせを聞いた時点に接して急に泣き出した」と意味を取って訳すことは可能ですが、物理的ではなく時間的接触です)
2の "on" は、もたれかかっているイメージです。依存ですね。単に接しているだけではありません。
3の "on" も、もたれかかっているイメージです。2、3は訳し分けますが、イメージは同じです。
4の "on" は、2、3の "on" のイメージがさらに明確になったものです。すなわち、彼の心にぐっとのしかかっている、というイメージなのです。のしかかった結果、彼の心に負担が生じている、そうした状態を表しています。単に接しているのではありません。圧力を感じる "on" なのです。
5の "on" は、「~に接して」とこじつけることもできます。
が、市の中を線路が通っているので、線路の上に市がのっかって接しているイメージをすることになり、不自然でしょう。
依存というわけではないですが、電車を使うとすれば常磐線になる、という点で、もたれかかっているイメージをすることができます。

広告・宣伝文句に乗せられて、わかった気にならないように注意したいものです。
できれば、英英辞典などで単語などの意味を確認したいところですが、
それを高校生に強いるのは、時間的にかわいそうです。
そこまでやるのは講師の仕事で、適切な時期に生徒に伝えることができる講師を選ぶべきでしょう。
学生のアルバイトや、偏った知識の英語オタクを批判する理由の一つも、ここにあります。
大学になんとか合格した程度では、実は高校生を教える資格はないですし(中学生なら可)、オタクのゴタクをお金を払って聞く価値はありません。

英語は英語の範囲で理解すればOKです。他言語のことは英語の力をつけるのに無意味です。受験に無益です。
英語は多くの言語から影響を受け、単語を吸収して成り立っています(ベースはゲルマン語を母体とした、ラテン語・フランス語・古ノルド語の影響を受けた言語)(英語の最も基礎的な語彙や文法はゲルマン語に基づく)
円の直径の "diameter""dia"(横切って)"meter"(測る)というギリシア語由来の単語で、円の半径の "radius" はラテン語由来の単語といった感じです。
でも、「それがどうした?」でしょ?

「英語の文法がどうしてそうなの?」という質問に対して「フランス語の文法がそうなっているから」と説明する人もいるようですが、何も説明したことになっていないことに気づいていないようです。
何も答えていないのに、それで答えを聞かされたような気がしてごまかされやすいです。加えて、英語はフランス語から成り立っているわけじゃないので、フランス語を持ち出した時点ですでにアウトです。
たしかに、11~15世紀頃にフランス語から借用された語彙が一万語にもなり、現在もその75%が残ってはいるものの、英単語は数千万語もあります。フランス語がどうのこうのって、言っても聞いてもしかたないですよね。

でも、その前に、「それがどうした?」でしょ?「受験に役立つの?」でしょ?「英語をスッキリ理解できる手助けになるの?」でしょ? フランス語関連はまったくのムダ情報です。
まあ、そんな話を塾の講師がするはずがないと思いますが。まちがっても、そんな話を「スゲー」なんて思わないでくださいね。

英語オタクはTOEICの点数を自慢しますが、実はTOEICには2つあり、ふつうにTOEICというときには、そのうちの Listening & Reading TestLRと略)の方だけを指しています。
2020年度から大学受験制度の変更で、英語を話す能力が求められることが決まっています。ですから、TOEICのもう一つの Speaking & Writing TestSWと略)の点数こそが重要になるのですが、そちらの点数を自慢している人はほとんど見ません(LR の得点を自慢する人は異常に多いです)。
LRだけしかできない「英語のスゴイ人」に習っても、民間試験で speaking の能力まで求められる大学入試共通テストの対策にならないのです(本当に「英語のスゴイ人」であれば通訳や翻訳の第一線で活躍しています)。
TOEICの公式データによると、LRが年間250万人ほどいるのに対し、SWは年間4万人に届きません。
(公式データ:LRhttps://www.iibc-global.org/toeic/official_data/lr.html
(公式データ:SWhttps://www.iibc-global.org/toeic/official_data/sw.html
2つのグラフは縦軸が大きく異なるので、縦軸をそろえてみると、次のような感じになります。
LRばかりを受けて点数を上げようとするオタクがとても多いことがうかがえます(LRはテクニックと練習で[英語の実力とは関係なく]点数を上げられる)。欲しいのは、SWの実力です。

この点、英検では、4技能すべてをテストされるので、実力を測定しやすいですね。
大学受験で受ける英語の民間試験は、TOEICLRSW より、英検の方が良さそうです。受験者数も多く対策もしやすいでしょう。学校で GTEC の練習をしている人はそれでもいいと思います。